映画をみる人

できれば毎日映画をみたい

『ジョニーは戦場へ行った(1971)』

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(原題:Johnny Got His Gun)

 

Please kill me...

 

戦争によって手足をなくした青年ジョーは、生ける肉塊としてこの世に生を留めているます。他の怪我人の治療の研究材料に、彼は病院で生かされていました。意識のみの世界で、彼は自分の過去と現在をめまぐるしく煩雑させ、今ある状況を何とか飲み込もうとします。

自分の過去とは、つまり戦争に行く前。恋人だった女性・カリーンとの幸せな時間を思い起こしたり、幼いころの父との交流を思い出していました。

戦争に行ってほしくないと、再三嘆いて引き留めた恋人の手を振りどき、ジョーは迎えの列車に乗り込みます。このとき、彼女に従っていれば。

彼の現在は、まさに芋虫。

江戸川乱歩の小説『芋虫』では、戦争から戻ってきた夫をかいがいしく世話をする妻の目線で書かれていました。やがて彼女も壊れてしまいますが。映画は逆で、肉塊となり果てた青年の目線で描かれています。

顔も抉れてなくなり手足もない状態の彼は、脳髄と腹部などの皮膚だけは無事でした。彼は皮膚から感じ取る変化を脳髄で判断します。しかしそれ以上彼にはできません。

何もできない彼のもとに、やがて救いの手が差し伸べられます。看護婦の知恵により、彼はある方法で会話をすることが可能になりました。

彼はわずかな希望を望み、一つの提案をします。絶望の中の希望でした。

しかしそれは、無慈悲にも切り捨てられてしまいます。後を絶たれたジョーは、何度も「殺してくれ」と悲痛に懇願します。

「殺してくれ」「助けてくれ」

ジョーの望みはもはやただそれだけでした。

 

ネットで「胸糞映画」と検索すると、『ダンサーインザダーク』『ミスト』とともに並べられる映画で、「さて、どんなものかな」と気持ち半分鑑賞してしまいました。

『ミスト』で耐性のついていた私は、ほんの少し甘く見ていたのです。気持ち半分では死にます。このぶつけどころのない悲壮感、まさに胸糞です。

しかし後味の悪い映画とは思いませんでした。だって最初から絶望の味がしていたじゃないですか。

 

おわり。